ギャラリーにもご登場いただいた『過疎地域の獣医療』に奮闘中の佐藤獣医師の貴重な経験談です。
ご自身で動物病院を経営する傍ら、富山県にある田んぼの中の病院、“うちの子動物病院”(本サイト内にリンクあり)で治療にあたっていらっしゃいます。
動物(ペット)を愛する飼い主の気持ちには、地域格差などないはずです。都心部では、人間と変わりない高度医療が施せる動物病院も完成し、話題になっていますが、今、過疎と呼ばれる地域で強く求められている「獣医療」のありかたとは・・・?!
動物医療における「過疎」というのはいろいろな意味を持っている 言葉であろうと思います。
文字通り病院の数が少ないための「過疎」はもちろんのこと、動物 病院と飼い主さんの獣医療に対する考え方が都会とは大きく違って いることも、そう表現される一因になっているようです。
僕が富山の病院に行って仕事を始めて、一番最初に感じたのは 20 年時が戻ってしまったような感覚でした。
僕が獣医になりたての24年前頃の横浜ととてもよく似ていて、獣医さ んが飼い主さんにする説明も、飼い主さんからされる質問も、発生 する伝染病までが当時とそっくりなのです。
獣医師がどのような啓蒙を飼い主さんたちに向けて行っているかは 診察にこられた飼い主さんたちから情報をもらうしかないのです が、はっきりいってあまりにもお粗末で驚くばかりです。
「こう いった説明を受けて、こういった手術を受けたのだけれど改善がない」「こういった病気といわれて何年も薬を飲ませているが、飲ま せはじめも含めて一切の検査を受けていない」「もう手遅れで手術 をしても意味がないといわれたが、治らなくてもせめてもう少し楽にしてあげられないだろうか?」等々、あげればきりがないほどです。
我々獣医師は、大事な家族の一員としての動物の命を扱っている仕 事であるということを常に心に置き、時には自分の生活を少し犠牲 にしても技術と知識の研鑽に力を入れなければならないということ と、トラブルを恐れるあまりに積極的な治療を避けてしまってはい けないのだということを改めて考えました。
高度獣医療ももちろん必要ですが、ワクチンの必要性、病気を防ぐ ための生活、具合が悪そうなら病院に連れて行って納得のいく説明 をしてもらうといった、いわば当たり前のことをもう一度飼い主 さんたちに理解してもらうことが必要だと思います。
充分な獣医療が受けられずに苦しんでいる動物たちのために、微々 たる物ながら力を発揮する機会を与えていただいた勝俣先生には、 大変感謝しております。
佐藤洋文
さとう動物病院